2025年3月31日 11:58
みこもかる通信~web版~第9回 油漏れ!?それとも。。。
第9回 油漏れ!?それとも。。。
田んぼの取水口、水たまり、澱んだ用水路のお水、、、その表面に浮いているキラキラとした膜を見てもしかして油漏れ!?と焦ったことはありませんか?
そのキラキラの膜は「鉄バクテリア」の仕業かもしれません。


鉄バクテリアとは、名前の通り水中の鉄分を栄養分にして自然界に生育している細菌の総称です。この鉄バクテリアは水中の鉄分の形を変える過程でエネルギーを獲得し、その結果「水酸化第二鉄」という鉄化合物が生成されます。鉄バクテリアの活動で生成される水酸化第二鉄こそキラキラの膜の正体です。

この写真は、鉄バクテリアを生物顕微鏡で観察した写真です。細長い菌体が縦に連なって糸の様な構造を作っている様子がわかると思います。周りの茶色いモヤモヤが、鉄バクテリアが生成した水酸化第二鉄です。水酸化第二鉄は少しだと薄い膜になって水面に浮かびますが、大量に蓄積されると明るいオレンジ色のヘドロになって排水口にこびりついていたりします。
鉄バクテリアは鉄分が多い環境だと張り切って水酸化第二鉄の膜を作るので、キラキラの膜ができるのは自然界でよくある現象です。しかし、油膜と水酸化第二鉄の膜はどう判別すれば良いのでしょうか?見分け方がありますのでご紹介いたします。
まず、水酸化第二鉄の膜は無臭ですので油臭がしないかが一つの判断材料です。次に、細い棒等で表面を触ってみてください。水酸化第二鉄の膜の場合、下の写真の様に表面を触るとパキパキと割れて膜に穴が開いたり亀裂が入ります。油膜の場合は、液体なので表面を触っても割れず、境界も滑らかなままです。
(これはあくまでも簡易的な判別方法ですので、全ての状況に当てはまるとは限りません。)

鉄バクテリアも水酸化第二鉄も無害ですので、この膜を見つけても焦る必要はありません。油膜の可能性が高い場合はあまりよろしくない状況ですので、消防局等に相談することをお勧めします。検査センターでも鉄バクテリアの同定試験や油分の分析を承っていますので、心当たりがある方はご相談ください^^
そもそも油膜や水酸化第二鉄の膜がキラキラに見えるのは何故?
油膜や水酸化第二鉄、シャボン玉がキラキラと様々な色に見えるのは、同じ現象によるものです。この現象を、「薄膜干渉」と呼びます。この薄膜干渉は、透明で薄い膜を通して光が反射する時に起こる物理現象です。
薄膜に様々な波長から構成される太陽光が当たると、薄膜表面で反射する光と、薄膜内に入ってから反射する光があります。これらの反射光が重なると、特定の波長(色)が強く見えたり、特定の波長(色)が弱く見えたりします。こういった光の干渉度合は膜の厚みによって変動します。シャボン玉や油膜は場所によって膜の厚さが違うので、光の干渉度合が部分ごとに変化し、様々な色に見える。という訳です。

温かくなってくると鉄バクテリアも活発になるので、春になってキラキラの膜を見かける機会も増えるかもしれません。もしキラキラの膜を見つけたら、表面を観察してみてはいかがでしょうか?
ねこ好き研究員 ねこ田